コロナウイルス感染国からこんにちは

コロナウイルス大流行中にカナダ留学を敢行する脱サラニートの葛藤と経験の物語…になる予定。

ブログを書こうと思い立ちました。

ブログを書こうと思った理由

ブログを書こうと思い立ったのは予定通り留学に行くことを決定してからだった。
日々募る不安のなか、カナダでどんなことが起こっても「ネタになる!」とポジティブな要素に変換できるのではないだろうかと考えてのことだった。
ただ僕には「嫌なことをすぐに先延ばしにする」という短所がある。
新型コロナウイルスの広がる中で「カナダへの留学」について考えることはコロナウイルスの蔓延前から一転して嫌なことへと僕の中で変わってしまった。
当然それに付随する「カナダ留学についてのブログの作成」も嫌なことに含まれており、前回の記事と今回の記事はなんと台北空港のスターバックスで、乗り換えの待ち時間を利用して書いている。
先延ばしにしながらもこんな状況の中で結局ブログを書いている。

なんだかんだで「一度決めたこと、引き受けたことはどんな形であれきちんと実行する」というのは僕の長所だなあと思う。

 

やっぱり行くことに決めてからの日々

今回は予定通りの留学決行を決めてからの僕の日々について書こうと思う。
とにかく毎日スマホでニュースをチェックする回数が増えた。
1時間に1回はニュースアプリを開き、「新型ウイルス」関連と「国際」関連の記事を読み漁った。
いつ渡航できなくなるのかわからない情勢の中でこれは必要なことではあったのだが、やはり読めば読むほどに不安は増幅していった。

 

アジア人差別への不安

特に僕を悩ませたのが海外でのアジア人差別の記事だ。
ロンドンでシンガポールからの留学生が暴行を受けたニュースは衝撃だった。
なんせ、他人ごとではない。明日の当事者は僕かもしれないわけだ。
僕は基本的に人からの批判に弱い人間だ。
誰かから批判されるとまず、自分の正当性より相手の言い分の正当性を考える。
自分から見た自分よりも相手から見た自分に重きを置いてしまう。
これは同時に相手の立場に立って物事を考えることにも繋がる性格を意味するから、時にはいい方向に働くこともあるのだけれど、自分の意見を通さなければならない場面だったり相手の意図に自分を攻撃することが含まれていたりすると最悪だ。
特に、相手の言い分に正当性が認められたときなんかには、僕はぐうの音も出せなくなる。
この性格を踏まえたうえでコロナウイルスを原因とする差別問題に立ち返ってみると、これが非常に相性が悪い。
「俺の国に新型コロナウイルスを持ち込むな!」
と言われたとき、例えば僕が何年も前からその国に住んでいて、ウイルス感染国への渡航歴がなかった場合には相手の言い分になんらの正当性もないわけだから僕にはノーダメージだ。
ところが実際には僕は新型コロナウイルスの感染国(3/14時点で感染者数700人程度)からまだ感染の広まってない国(同150人程度)に渡るわけで、相手の言い分は至極真っ当だ。
この記事を書いている今ではアメリカでの感染者数は日本のそれを超え、カナダでも感染者数が増え続けているからまだマシだ。
けれど僕が悶々としていた時期にはアメリカでの感染者数は少なくカナダでも数十人程度だった。
豆腐メンタルな僕が何度前言を翻して留学を延期しようとしたかしれない。
そこにきて何人かの友人に「『Hey! Mr.Corona?』って呼ばれるかもよ?」などとからかわれたあの日、よく笑い返すことができたものだと自分を褒めてやりたい。
実は今でも定期的にtwitterで「カナダ 留学 コロナ」で検索していたりする。
幸いにして人種国家のカナダではそこまで過激な差別は行われていないように見える。

 

 黒子、テロリストになる

次に僕が悩まされたのがホストファミリーや学校のクラスメートへの感染だ。
のこのこと日本からコロナウイルスを手土産に渡っていって、僕発信でトロントに市中感染をもたらしたなんてことになったら僕はまさにテロリストだ。
このことをアメリカ人のゲーム仲間に話したら爆笑していたが、あのとき僕は結構真剣だった。
幸いにして決定したホストファミリーの方の家庭には新型コロナウイルスで深刻な被害を受けるであろう高齢者の方はいらっしゃらなかったので僕の心労は少しばかり軽減された。
いち留学生に家族を殺されたとなればパンフレットで善意にあふれた笑顔を浮かべるホストファミリーのみなさんとて黙っていまい。
ナイアガラの滝に放り込まれたって文句は言えない。

 

前述の2つの悩みに付随して発生した次の悩みがカナダに行ってからの生活の仕方だった。
ホストファミリーやクラスメートにコロナウイルスを感染させたくないのであればマスクの着用は必須だ。
実際、マスクはウイルス保持者が着用して唾液や鼻水をところかまわずまき散らさないようにすることでこそ感染防止の働きを果たす。
しかしながらマスクの着用が日常的なものではない北米や欧州では「アジア人がマスクをしている=コロナウイルスだ!!」の図式が完成してしまっているようなイメージがある。
つまり1つ目の悩みである差別問題と2つ目の悩みである他者への感染問題が二律背反問題として新たに僕の背中にのしかかってきていたのだ。


僕は自分で言うのもなんだがかなり正直な性格だと思う。
就職活動の面接で「御社は第2希望です」なんて真っ正直に話す就活生を僕以外にこれまで見たことがない。
僕の人生において「フェアであること」はいつとも知れないうちにすごく重たい部分を占めるようになっていた。
現状、カナダについてからのマスクの着用をどうするか僕の中で答えは出ていない。
語学学習はそのままコミュニケーションに繋がる。
語学学習の場において自らをコミュニケーションのアウェイに据えることはものすごく不利なことのように思う。
僕がカナダに着いたとき、カナダでマスクの着用が少しでも一般的なものになっていることを願うばかりである。

 

疎かになる英語学習

最初に述べたように僕には「嫌なことを先延ばしにする」悪癖がある。
これらの悩みに苛まれるうちに僕の英語学習は段々とおろそかになっていた。
留学の2週間前には文法書で自習をしたり英会話教室に通ったりすることはおろか、Netflixで英語字幕や字幕なしで海外ドラマをみたり、外国人の友人と英語で話しながらゲームをすることすら億劫になっていた。
昼前に起床してニュースを見て、日本政府の対応に文句を言い、感染の広がり方に不安を募らせる毎日が続いた。
挙句の果てに歯医者で複数の虫歯が見つかり、渡航前に直しきるために毎日歯医者に通う羽目になったりした。
そんななかで救いになったのが・・・と普通なら続くはずだが生憎とそんなものは存在しなかった。
グダグダと日々を過ごしたまま渡航当日を迎えている。
強いて言うならば渡航の週になって深夜2時3時だった就寝時間を1,2時間早めるようにしたのは効果的だったと思う。
不安で眠る気がせず、グダグダと1人でゲームをしたりyoutubeを観たりしていたが、朝起きたときの気分は最悪だった。
早寝早起きは精神バランスにいい影響を及ぼす気がする。
それから渡航1週間前にホストファミリーが決定したのも精神的に楽になった。
ホストファミリーの家に子供がいたのもよかったかもしれない。
どういう形であれ自分を迎え入れてくれる人がいることと、僕が子供好きであることから少し前向きな気持ちになれた。
心のどこかで「ホストファミリーが決まりませんでした」となって留学延期の言い訳ができることを望んでいた僕もいたのだけれど。

 

出発までの日々。起こる事件。

留学が決まってからは極力外出は控えるようにした。
一度、大学の後輩の結婚式に出かけるときにはお祝いの気持ちと共に戦々恐々としたが、その後のウイルス潜伏期間である2週間は何事もなくすぎて胸をなでおろした。
英会話教室に出向かなかったのも、感染を防ぐためというのは理由としてあった。
英会話教室を含め、外出を控えた理由には鬱々とした気持ちの中、外に出る気にならなかったというのが大きな部分を占めるのだけれど。
そんな調子だったから僕の中で留学が段々と現実味を失っていった。
このことが後に事件を引き起こす。
留学を控えた前々日、エージェント会社の担当者の方から電話があった。
「黒子さんの使う航空便の欠航などは現在見られませんが、状況は日々変わっていきますのでご注意ください」
といった経過報告のような連絡だったが、この連絡を受けて僕は航空券の手配会社であるHISにパスポート番号を連絡していなかったことを思い出した。
驚くべきことに、自分を不安にさせるウイルス関連のニュースは毎日確認していた一方で本当に自分の留学にかかわる航空便についての注意を僕は全く払っていなかったのだ。
パスポート番号を登録するため、2週間ぶりにHISのマイページを開いた僕は目を丸くした。
『【重要】減便に伴う欠航・代案のご案内』
自分に対するお知らせの欄にはっきりとそう書いてある。
は? え?
焦りと疑問符で頭をいっぱいにしながらそのメッセージを開くと、自分が予約した便が減便になり代案として1便早い便を利用するか航空便の取り消しをするか選べとの趣旨のことが書いてあった。
繰り返すが前々日のことである。
メッセージの送信日を確認すると送信日はさらにその前々日。
取り消しの場合は復路の便を含めて全額返金となる旨が記載してあった。
連絡当日に気づいていれば!!!
僕の頭をまずよぎったのがこれである。
どんだけ延期したかったんだよと我ながら思う。
つまるところそれが僕の本音だったのだろう。
実際のところ僕がそのメッセージの送信当日に気づいていたところで本当に延期したかはわからない。
現実として気が付いたのは送信当日から2日後でさらにその2日後には留学に出発するのだ。
しかも気づいたのは夕方である。
もはや後に引き返す選択肢は残っていなかった。
僕にできるのはさっき電話をくれた留学担当者さんに便が変更になったことを折り返し連絡することだけだった。